2020年2月12日(水)、大阪工業大学「ものづくりセンター」と取り組んできた『自分自身が作りたいものを作ってみよう!』という研究の卒業論文発表会がありました。
みなさま、こんにちは!赤坂金型彫刻所 三代目・赤坂 兵之助です。 2020年2月12日(水)、2019年4月から大阪工業大学「ものづくりセンター」と取り組んできた『自分自身が作りたいものを作ってみよう!』という研究の卒業論文発表会があり、私も参加してきました。
大阪工業大学「ものづくりセンター」と『自分自身が作りたいものを作ってみよう!』という研究との出会い
2019年2月、私は東大阪市での5軸加工機のセミナーに参加していました。
「多軸の5軸加工機でいかに精度良く加工するか」という、その頃の私の関心事へのタイムリーなお題でのセミナー。
セミナーを拝聴して、とても興味深く面白かったことを講師である井原教授にお伝えすると、井原教授から「一度、研究室に遊びに来ますか?」とお誘いいただきました。
このお誘いが、これらの取り組みのきっかけです。
初めての大阪工業大学!
大阪工業大学はとても大きな大学で、初めての私にとってはほとんど迷路。
駐車場も分からなければ、誰に道を訊ねていいかも分からない。
ただここが「工学系の大学」であることは、校舎に掲示されている。
ポスターや佇まい、学生さんの雰囲気、小さく聞こえる「うねり」。 それらからも大学の大きさを感じ取れました。
20年ぶりくらいの「大学」という敷地で気取ってもしょうがないからと、わりとラフな格好で研究室にお邪魔させていただいた私を歓待してくださった井原教授は、「ものづくりセンター」をくまなく案内してくださいました。
後で分かったことですが、「ものづくりセンターの長」らしく、私からの質問へのよどみのない自信に満ちたお答えがとても印象的でした。
他の大学がきっと羨ましがるセンターの整った設備一式を紹介してくださり、「研究室生と共に、何かおもしろいものを作れないか?」と教授からお誘いを受けました。 その日はよく晴れた暖かな冬の終わりで、そのお誘いに私はただ「はい」とお答えしたのを思い出します。
初めてセンターで顔を合わせた雄樹と新太
初めてセンターで顔を合わせた、大学のブレザーを着込んでネクタイを締め、この先の人生が楽しみでしょうがないといった表情の「真新しい」二人雄樹と新太は、窓から差し込む初春の太陽を横顔に受けながら「宜しくお願い致します!」と私に挨拶してくれました。
井原教授にいくつかの説明を受けながら、「私はこの子達に一体何を教えてあげられるんだろう?」という重責を強く感じていました。
マシニング加工そのものはいいとして、5軸加工となると私自身が普段に扱わないので、「ものづくりが楽しい、そう思える取り組みにできるだろうか?」という危機感からのスタートでした。
それでも5軸加工への興味と憧れ、与えられた責任、何よりこれから始まる取り組みへの「ワクワク感」の中、大学以外での「それ」への実地と独学を進めていると、「ああそうか、自分自身が『学生になればいい』のか!」との妙な気付きによる安心感が生まれてきました。
『指導者というよりは、一人の仲間となれたら。そんな思いで続けよう。』と素直に思えたのでした。
私の参加を大いに助けてくれた先輩の田窪さんとの出会い
拙い私の参加を大いに助けてくれた先輩の田窪さん(私からしても院生の田窪さんは先輩)は、考えれば考えるほど分からなくなるような、まるで魚がエラ呼吸で水中の暮らしを選んだ理由を解説しているような難しいお題の論文作成の合間を縫って、デッケル・マホの使い方や5軸CAMの使い方を教えてくれました。
新太や雄樹のフォローを始め、各方面で私を助けてくださいました。
ある時などは、伊賀での展示会から帰る車中の道すがら、今まで考えていた事や今まさに考えていること、この先に考えないといけないこと、そんな事を聞かせてもらう内に、「田窪さんが参加してくれているなら大丈夫」と、とても心強く思えた数時間がありました。
そして私が参加しての卒業論文研究発表の本番がやって来た!
今思えば、一番緊張して一番取り留めがなかったのは私だったかもしれません。
マシニング加工が嫌になるような、「ものづくり」が楽しくないという取り組みになってはと、製造現場にありがちな「3S・5S活動」には手を抜かなかった、手を抜きたくなかったので、それらの意味と価値を伝えていきました。
粘り強く取り組みたいけれど、その「想い」をどんなふうに伝えればいいんだろう? 理解はしても、納得はしてくれないんじゃないのか?
副センター長の岩田先生が仰る『ここは教育現場であって、生産現場ではない』とのお教え通り、私には何かが足りていないんじゃないか?
あるいは何かが多すぎるんじゃないか? そんなことばかりを考えていました。
そんな私の心配をものともせず、雄樹と新太は持ち前のセンスを発揮し、まるでスポンジが水を吸い込むような勢いでデッケル・マホを扱い、オリジナルのデザインを3Dに置き換え、実加工への段取りを進め、整理整頓を考える。
まるで私自身が「試されている」、そんな勢いと緊張感のあるセンターでの取り組みはどんどん進み、二人の作品はこの時の目標であった「DMG森・ドリームコンテスト」の期日に間に合ったのでした。
論文発表会では、私の知らない学生さん達の発表もたくさんありました。 電車車両のブレーキをどうするとか、「悲鳴」が起こった時にスマートフォンに認識させて通報させるとか、複雑で見たこともないような公式の連続で報告される研究発表には、「やっぱり、ここは工学系の大学なんだなぁ」と改めて感心させられ、このような「敷地」で新太と雄樹と取り組めたこの一年をとてもうれしく思えました。
発表の直前、雄樹と新太は「先生にあれこれ突っ込まれるかなぁ」と少し緊張していたけれど、「まぁ、楽しんできたら?」との私の軽口を受け止めてくれていました。 その二人の発表は、普段大勢の前で話す機会の少ない学生さんとしても十分に安定していて聞きやすく、自信に満ちていて、「見てくれ、俺達がこれをやったんだ!」と言わんばかりの12分間。 この一年間の記録を大切なみんなと共有しながら、その場にいた他の学生さんたちがきっと嫉妬するくらいに完璧にこなし、大きな拍手と共に発表を終えたのでした。
学生たちと歩んだ研究活動を振り返って
この先に新しい出来事や経験が際限なく待っている彼らからすると、ひょっとしてこの一年間のことはそんなに永くは覚えてはいられないかも知れません。
でも私には、私の人生の中で初めて出会った私の「教え子」たち。 まさか私の人生においてそんな子達に出会えるなんて。
今日の学生さんたちは、明日の日本の姿であることに議論は持ちません。 私は履き慣れない革靴で駐車場に向いながら「きっと日本の未来は悪くない」、そうひとりニヤニヤとして自分の仕事に戻ろうと急ぎました。
この日の一番の反省は、二人の発表が終わったあとに「ブラボー!」と立ち上がって叫べなかったこと。
新太、雄樹、ゴメンよ、私は出来の悪い講師でしたね。 そんな私ですが、君たちとの出会いは私の宝物です。 1年間、共に学んでくれて本当にありがとう! 君たちの未来を応援します!未来に羽ばたけ!新太!雄樹!
赤坂金型彫刻所 三代目・赤坂 兵之助
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